イタリア生まれのアーティスト、Maurizio Cattelan氏が今最も刺激的な現代アーティストとして注目されている。
Maurizio Cattelan氏の回顧展「All」を下から見上げた様子、ニューヨーク、グッケンハイム・ミュージアムにて
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イタリア生まれのアーティスト、Maurizio Cattelan氏が今最も刺激的な現代アーティストとして注目されています。氏の物議をかもす作品は強烈なテーマを身近に感じられるように和らげながら、今日の大衆的な文化や歴史、根深く組織化された宗教を沢山のユーモアを交えて描き出します。氏は文化的批判を、今日の社会の核心における一見本質的に矛盾して見えるものを明らかにする、時には不快感を感じるほどの超現実的なオブジェクトによって表現しています。
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Cattelan氏の芸術的な作品の多くは自身の幼少時代の影響を受けています。北イタリアの街、パドヴァで育ち、氏の青年期の記憶には家庭の経済的苦難や学校での体罰、散々こき使われた労働経験などが刻印されています。これらの初期の経験が、権威に対する彼の永続的な不信感及び彼の初期における芸術的作品の多くに顕著に見られる困難な労働に対する軽蔑としてこのアーティストの心記憶に深くとどまることになったのです。
政治的そして社会的に激論を起こすことになった全作品の中に、Cattelan氏は常に自分自身を登場させています。その中で彼自身が、彼のイコノグラフィの主要人物として演じ、凡人として彼自身を助長し、また傍観者である私たちがそうである必要がないように愚人として彼自身を描写しているのが特徴的です。
それぞれの作品がグッケンハイムのロトンダの円窓から吊られている
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Cattelan氏がオブジェクトを通して訴える意志を描くために攻撃性、残忍性、厚かましさといった特質が用いられることがあります。このアナーキスト的アプローチが、氏のイタリア人としてのアイデンティティや自国の絶え間なく変化する政治的風土の緊張といった問題の周囲を循環する作品へと拡大していきます。さらに形態のモラルに対する深在的集中性が、この主題の重要性を探求する手段として用いられる実際の死によって想定された仮性の生命状態を表現しながら、何度も繰り返し使用する剥製といった氏の作品の核に見受けられます。
地上階からの眺め
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ニューヨークのグッケンハイム・ミュージアムで開催されているMaurizio Cattelan氏の回顧展は氏が1989年以降制作した全ての作品の集大成です。「All」という題名にふさわしく、このショーではあたかも絞首台上にあるかのようにロープで巻き上げられた各作品がグッケンハイムのロトンダに設けられた象徴的な円窓から吊り下げられています。真のCattelan風として、この
作品の型破りな配置によって通常のエキシビション形式を覆しています。全体的に天井吊り下げられたオブジェクトは大量処刑のように現れ、そしてその一群はそれ自体が支配的で悲劇の美術作品なのです。この年代順の回顧展のコンテクストでは、Cattelan氏のジャンルにおける究極の理想化である作品自身の無益性を讃える、場所性を重視したインスタレーションを実現しています。
designboom内のMaurizio Cattelan氏のエキシビション「All」のプレビュー記事はこちらから。
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「la nona ora」1999年作
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「not afraid of love」2000年作のインスタレーション
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David Heald © Solomon r. Guggenheim
アーティストは自分自身を作品の中に登場させている、彼自身の特有性が彼のイコノグラフィの主要人物として特徴づけている
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「him」 2011年作
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David Heald © Solomon r. Guggenheim