手塚建築研究所のデザインによる「Ring around a Tree」
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デザインとは単に美的感覚及び機能に左右されるものではなく、環境に対する配慮や意識の向上とともに、今日のデザイナーたちはより環境問題に関心を寄せ、環境に対してデザインしたりあるいはそういったコンセプトを自分たちのデザインに取り込む方向にあります。
Hong Kong Design Centreは、環境デザイン同様、アパレル及びアクセサリーデザイン、コミュニケーションデザイン、プロダクト及びインダストリアルデザインなどの18のカテゴリーに分かれた毎年行われるDesign for Asia (DFA) Awardsを通して卓越したデザイナーたちを見い出しています。環境に対する配慮は世界中の全てのデザイナーたちの関心事であり、各々がそれに対する独自の解釈やデザイン法を開拓しています。2011年のDFAアウォードの受賞者たちの間では、アジア的な価値及びスタイルを反映した秀でた作品によってアジアのデザイナーがその他の国のデザイナーとは一線を画していました。そんな中、東京の立川市民に愛される地元の大木と自然環境を考慮した手塚建築研究所のデザインによるふじようちえんの「Ring around a Tree」が2011年のDFAアウォード受賞作品のひとつに選ばれました。
幼稚園の既存建物と通りの間に建てられたこの新しい構造物は、遊び場、英語教室、そしてスクールバスの待合所としての空間を提供します。木材と透明ガラスを使用し、この構造物はケヤキの木の幹のまわりに木製のプラットフォーム、安全のための目立たない手すりを組み合わせて螺旋状の空間を形成します。この大木自身は単なる木ではなく、それには歴史があり、またプロジェクト全体の主人公であるケヤキの木なのです。50年以上昔に植えられたこのケヤキは台風に襲われ、ほとんど根絶状態でした。しかしこの木は完全に乾いた状態となって信じられない事に回復したのです。この木は昔から地元ではこどもたちが登ったり遊んだりできる唯一の木だったので、地域のお年寄りたちにとっては思い出のそして親しみのある木なのです。
大藪義章建築計画所のデザインによる「Open Architecture Project」
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大藪義章建築計画所のデザインによる「Open Architecture Project」は層状になった段差や昔よく見られた広縁といった伝統的な外部空間など日本独特の概念を取り入れています。大阪に計画されたこのプレジェクトでは3 x 25mの用途の限られた細長い敷地を最大限に利用して高密度な日本の都市部における慢性的な空間不足問題を克服しています。5つの戸建て住宅に接しながら拡張された複数の階で構成される遊び心あふれる歩道は、こどもたちや近所の住民が地域活動に加わったり、お互いに会話を楽しんだりすることができるような空間として作られました。
最上階の木製デッキは子どもたちがおもちゃを収納できるように、また住民が地域活動を企画できるように設けられました。デザイナーが伝統的な構造を利用することでアジア的な価値への彼らの記銘力を打ち出しながら、日本における特に密集した環境を意識していることをこのプロジェクトでは実証しています。
左:台湾のLong Tsai Corporationの設計による「Embo Hospital」
右:香港のRADの設計による「Solo Building」
台湾のLong Tsai Corporationの設計による「Embo Hospital」は中国の厦門にある画期的なデザインの医療機関です。通常の病院に見られる平凡な壁面は曲線の流れる波面に取って代わっています。また際立った螺旋階段は病院の最も重要な要素であり、視覚的及び空間的広がりを強調します。胎児のような形をしたこの階段は生命の誕生を象徴し、医療施設の使命を強く打ち出しています。環境への配慮を計画に盛り込み、多大な廃棄物となるはずだった大理石を再利用したり、建設には再利用のその他の現材料を利用しています。この病院は世界における同じような環境に対してインスピレーションを与えるだけでなく、婦人科及び産科分野に対する病院の新しいコンセプトを構築しています。
香港における都市再開発プロジェクトのひとつである香港出身のRADによって設計された「Solo Building」は、市のあらゆる建物の外壁に取り付けられたエアコンから排出される高濃度な公害問題に視覚的に見事に取り組んでいます。黒鉛色の建物の外観と対照的な特殊な黄色の金属ワイヤーの箱でエアコンを隠し、目障りな要素がくっついた平凡な集合住宅から美的センスに訴える高層建築に変わりました。デザインチームは建物の外壁に使われている暗い黒鉛色と対照的な黄色い金属ワイヤーを用いることを思いつき、建物に取り付けられているエアコン装置を全て覆い隠し、また建物の正面玄関の角張ったラインを黄色で強調することで従来の建物を活性化させました。この建物はTai Kok Tsuiの旧市街地近隣に対して単に活気を与えるだけでなく、街の老朽化していく建物の外壁を増強する解決策を生み出すことに貢献していると言えるでしょう。